医学部産科婦人科学
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Q 産婦人科医になったきっかけを教えてください。
小さい頃は、自然科学者に憧れていたんです。高校生になると物理学に目覚めて、相対性理論や量子力学の本を読みあさっていました。将来は理論物理学や天文学をやりたいと思ったりもしたのですが、父親が産婦人科医だったこともあり、医学部に入って分子生物学をやることにしたんです。
いざ産婦人科医になってみると、大変でしたね。若手の頃は当直が月に10回くらいあって、ほとんど眠れないまま次の日の勤務に入るわけです。当時は今よりも出生率が高かったので、分娩数も多かったんです。でも、その期間に医師としての診察能力は相当鍛えられました。その後、研究をやりたいという思いが強くなり、3年間アメリカに留学しました。
留学中は中枢の内分泌学の研究をして、帰国後は周産期医学に携わりました。周産期医学というのは、妊娠22週から生後満7日未満までの母体と胎児・新生児の医学的・生物学的問題を研究する学問です。臨床と研究がリンクする、非常におもしろい分野だと思っています。 -
Q 周産期医学というのは、具体的にはどんな研究をしているのでしょうか。
例えば、どうして赤ちゃんはあんなに早く大きくなるのか、大きくならない赤ちゃんがいるのはなぜなのか。そういったことを突き止めていくわけです。一番おもしろいと感じているのは、お母さんと赤ちゃんの関係ですね。お腹の中の赤ちゃんは、母体から栄養をもらわなければ生きることができないので、必死で栄養をもらおうとします。一方、お母さんは胎児に栄養をあげながら、自分の命も守らなければならない。そこを制御しながら子宮の中で育てているわけです。
その過程で、赤ちゃんからいろんなサインが出ていたり、お母さんがうまくコントロールしたり。とても複雑で興味深いです。現在、医学の分野では、がんについては大体のことが分かってきました。今後は、生殖と脳の科学が中心になっていきます。人間は他の動物と比べると、とても生殖効率が悪いんです。今、不妊症が話題になっていますが、1000年、2000年後は、生殖補助医療がもっともっと増えているのではないか。そんなことに思いを馳せることもあります。 -
Q 最後に、妊産婦さんへのメッセージをお願いします。
目の前の患者さんを助けるため、最善の努力をするのが医師の使命です。妊産婦さんに対しても同じですね。未受診妊婦の問題が話題になることもありますが、ぜひ私たち産婦人科医を信じて、健診に来ていただきたいです。妊娠の経過を見守り、安全な妊娠・分娩のために全力を尽くしたいと思っています。元気な赤ちゃんを生んでくださいね。